アンナの赤いオーバー

 「戦争が終わったらあたらしいオーバーを買ってあげようね」と物語は始まります。お母さんと
アンナ、お父さんは登場しません。物語はどこの国でいつの戦争なのだろう。ホフマンという人
の名前や建物の形からヨーロッパの国、時代は第二次世界大戦が終わったころでしょうか。
 アンナの青い古いオーバーは小さくてもうすりきれてきたので、お母さんは新しいオーバー
を買ってあげたいと思った。戦争が終わったばかりでまずしくお金はありません。おじいさんの
金時計と羊の毛を交換しました。ランプは毛糸をつむぐのに。つむいだ毛糸は森で赤いコケモ
モをとってきてお母さんが赤くそめました。ガーネットのネックレスは、ぬのじにおってくれたは
たやさんに。きれいなティーポットはしたてやさんに。
アンナはあたらしい赤いオーバーをはおって、かがみのまえでくるっとまわった。


ちいさな きの ねがい

 ある あたたかなはるのひに ちいさなきが たねからめをだした。となりにみどりのくさがめ
をだして、やがてまっかなはなをさかせた。ちいさなきとみどりのくさはともだちになった。ちい
さなきははなをさかせたいとねがうようになった。にかいふゆをこして、さんかいはるをむかえ
たとき、ちいさいきもりっぱにおおきくなっていた。えだいっぱいのはなをさかせて、にっこりわ
らってたっています。



すてきな三にんぐみ

 くろいマントにくろいぼうしの三にんぐみは、だれもがこわがるどろぼうです。ある すみをなが
したようなばんのこと いつものように馬車をとめた なかにはみなしごのティファニーちゃんひ
とり。えものは なんにもなかったので、ティファニーちゃんをかくれがえ。あくるあさ たからの
やまをまえにティファニーちゃん 「まあぁ、これどうするの?」 三にんぐみはかおをあわせ ひ
たいをあつめてかんがえた。それから三にんぐみは あつめたあつめた くにじゅうの さびしく
かなしく くらいきもちでくらしている すてごやみなしごをどっさり。三にんぐみは みんなでいっ
しょにくらすため すてきなおしろをかった。おしろのじゅうにんは みんな あかいマントに あ
かいぼうし。こどもたちはすくすくそだち、つぎつぎとけっこんし、おしろのまわりに家をたてて村
はどんどん大きくなった。そのころには 三にんぐみのことは もう むかしのこと。むらのひと
たちは みっつのたかいとう をたてた。すてきな三にんぐみのことをわすれないために。


ザガズー(ZAGAZOO)

 ジョージとベラのもとに、ちっちゃなピンクのいきものがやってきた。にふだにザガズーとかい
てある。それからというものザガズーはつぎからつぎへと変身します。はげたかのあかんぼう、
ちっちゃなぞう、どろまみれのイボイノシシ、おこりっぽいりゅう、あるときはかなしそうなこうも
り。そのうちけぶかいいきものになって、せものびて、とらえどころもありません。ザガズーにミ
ラベルというおんなのともだちができました。ふたりはいっしょにいきていきたいとおもうように
なり、ジョージとベラにほうこくにいきました。すると年老いたジョージとベラはちゃいろのペリカ
ンにかわっていて、くちばしをかたかたいわせたのです。子も親も変身するのですね。
   大人が子どもを育てる苦労と、子どもが自分で育っていく苦労と、どっちが大変なのだろう
   と考えることがあります。・・・・・子どもは可愛いだけの存在ではありません。子どもがとき
   に大人の目からは理解できない怪物に見えることは、誰しも経験することです。・・・・まだ
   人間になりきれない、不思議な生きもの、そこにこそ子どもの成長のエネルギーがひそん
   でいるのではないでしょうか。そして大人は老いるにつれて子どもに戻っていきます。今度
   は大人になった子どもが、子どもに戻った大人とともに生きていくのです。・・・・・・。
                                     訳者  あとがき


おおきな 木の おはなし

 のはらにおおきな木がたっていた。おおきな木のまわりをリスがかけまわり、とりはすをかけ
、はのあいだをむしたちがいききした。はるには枝いっぱいに花がさき、おいしいみがいっぱい
なった。みからたねがこぼれおち、まいとし子どもの木がたくさんうまれた。
はるに花がさき、たいようのひのひかりをいっぱいにあび、そよかぜにゆれ、ざあざあとあめに
うたれ、あきにはまっかにこうようして、はをおとした。ふゆをこして、またはるをむかえる。こう
しておおきな木はなんじゅうねんと いきた。
おおきな木はとしをとり、あるふゆのひたおれてしんだ。たおれてしまってからは、あらいぐまが
すをつくり、コケやキノコのえいようとなって、すこしずつくずれてつちにかえっていきます。こう
してつちにかえることでだいちとひとつになるのです。
いま、おおきな木の子どもやまごたちが、たくさんのいきものたちのすみかになっています。


あさになったので まどをあけますよ

 あさになったので まどをあけますよ。
森のいりぐちに家がある風景。家がてんざいするいなかの風景。ドーム屋根にまるまどの都市
の風景。大都会の風景。大河のながれる村の風景。湖のある風景。ヤシの木のはえる海辺の
風景。山麓にひろがるコムギ畑の風景。海の風景。


この国が好き

 鎌田實さんがお孫さんに寄せる思いと、日本国憲法について書いています。
 「日本国憲法は外国人が口出ししてできた・・・・・」
「自衛隊はすでに軍隊だ。だから軍隊を持たないといっている憲法はおかしい・・・・・・」 
「日本国憲法を変えたとき、いま貧困から脱出しはじめたアジアの国々が医療や教育のためよ
りも、軍隊にお金を使うようになり、軍備の増強合戦がはじまる。」
「日本国憲法の不自由さがいい・・・・・・・。60年戦争をしてこなかったのはこの不自由さのおか
げでした。」

 “ブーツ・オン・ザ・グランド(地上に部隊を)”、“ショウ・ザ・フラッグ(旗幟を鮮明にせよ)”のア
メリカの強い要請のもとに、日本はイラク特別措置法を国会で承認し、2003年12月から200
9年2月まで人道復興支援活動と安全確保支援活動にかぎってイラク南部サマワで活動を展
開しました。多国籍軍死亡者2700人、負傷者18,000人以上。タリバン、反政府軍死亡者
38,000人以上。日本の自衛隊員の死亡者は0でした。日本の憲法の不自由さのおかげです。

 あとがきに代えてで幕末の新撰組の掟(憲法)と吉田松陰の松下村塾のきまり(憲法)が照会
されています。日本という国の歴史の転換期に二つのグループが起こり、その結末については
私たちの知るところです。
      新撰組の法度書                   松下村塾のきまり
    一、士道に背(そむ)きまじきこと         一、月謝自由きままなるべし
    二、局を脱するを許さず               二、共に師、共に弟子たるべし
    三、勝手に金策いたすべからず          三、出欠各自勝手たるべし
    四、勝手に訴訟(そしょう)を取り扱うべからず
    五、私の闘争(とうそう)を許さず、離反(りはん)
       する者斬(ざん)