おおきな木(The Giving Tree)

 一本のリンゴの木とちびっこの物語です。ちびっこは、少年になり、
青年になり、大人になり、年老いていきます。
作者のシェル・シルバァスタインは朝鮮戦争の退役軍人で、この本は
1964年、44年前に作られています。訳者のほんだきんいちろう氏は、
児童書にめずらしく、「愛とは与えることであって、受けることではない
」という思想が横たわっていると言います。「与えると」は何かと。



すばらしい季節

 “ターシャの庭”で有名になったターシャ・チュ−ダーですが、1915年
にアメリカのボストンで生まれました。23歳の時最初の絵本を出版し、
今では100冊をこえています。幼年時代を農場で過ごし、農場で暮ら
しながら子育てをし、日々のできごとを絵本にあらわしました。この本
は1966年ですから42年前、ターシャが51のときに作られています。
ーしずかに五感をあたためー「目でみて、耳できいて、においをかい
で、手でさわって、口にいれてみて」季節が変わっていくようすをじっ
とみています。
今もヴァーモントの山の中で2匹のコーギと暮らし、鶏や山羊、鳩の世
話をし、日の出前に起き、夜は手作りのローソクで灯りをとり、このくら
いのわがままは許してもらえると言って花を植えています。



まちのねずみといなかのねずみ

 原始仏教の釈迦が誕生したのが紀元前5世紀頃といわれていま
す。イソップは紀元前6世紀頃のギリシャの寓話作家です。「住めば
都」といいますがあなたは「まちのくらし」派?「いなかのくらし」派?
イソップの時代でも現代のような格差社会が論じられていたんです
。人間はいつまでたっても変わらない人間です。いもとようこさんの
描く二匹のねずみの表情がとてもいいです。


スイミー、フレデリック、あおくんときいろちゃん

 作者のレオ・レオーニは1910年オランダのアムステルダムに生ま
れ、イラストレーター、グラフィックデザイナー、絵本作家として活躍
しました。切り絵とクレヨンと水彩でかいたような絵は素朴で明るく、
ストーリーも絵もユーモアがあって詩的でやさしい。



なつのおうさま

 ひまわりがふんすいみたいに、そらへそらへとたかくのびていく、夏
の思い出。とんぼいけでシオカラトンボ、ギンヤンマ、オニヤンマをお
っかけた思い出。わかれのときの「きゅん」は、えいえんの「きゅん」。
だれもがもつとおい思い出。

ヤクーバとライオン

 アフリカのおくちにある小さな村です。少年たちは一定の年齢にたっすると
勇気をためされライオン狩りにでかけライオンをしとめなければなりません。
少年ヤクーバーは傷ついたライオンにめぐりあいます。ライオンはヤクーバに
いいます。「おまえには二つの道がある。一つはわしを殺すことだ。村に帰れ
ば勇気ある戦士と認められ、尊敬されよう。もう一つの道はわしを殺さないこ
とだ。そうすればおまえはほんとうに気高い心をもった人間になれる。その時
おまえは村人からさげすまされ、仲間はずれにされるだろう。どちらの道をえら
ぶかそれはおまえの考えることだ。」
殺さない勇気。戦わない勇気。中東(イスラエルとパレスチナ)、西アジア(アフ
ガニスタン)、東欧(セルビアとフェルツエゴビナ)、最近まで、今も宗教や民族
紛争、経済紛争による戦争がたえません。こどもたちのまわりでは、いじめの
問題があります。なぜ紛争が起きたのか、何のために殺しあうのか。
結果、だれがどれだけ得をするのか。戦わないことの意味と、戦わないことの
勇気を子どもたちとともに考えたい。