ピンクになっちゃった

 パトリックがある朝目をさますと、からだぜんしんがピンク色にかわっていました。学

校に行くとピンク色のせいでみんなにからかわれます。パトリックは「ここにはいられ

ない」とピンク色のフラミンゴのすむアフリカの国へいくことにしました。なんきょくの海

をしゅっぱつして7日およぎつづけてフラミンゴのすむアフリカにつきました。フラミンゴ

は本でみたとおり、ぜんしんピンク色でした。けれども食べるものもちがうし、一本足で

たってねむることもできません。けっきょくここですむことはできないと、南極の海へ

かえることにしました。お父さんもお母さんも学校のみんなも、パトリックがもどってきて

くれたのをよろこんでくれました。パトリックはもとのピンク色のまま、学校でみんなにピ

ンク色のフラミンゴやアフリカのあたたかい海の話をしました。


チリンのすず
 
2013年に亡くなったやなせ・たかし さんの絵本です。
 
物語は「チリンのすずでおもいだす このよのさびしさ またかなしみ」ではじまりま

す。子ひつじのチリンのお母さんはオオカミのウォーにころされてしまいます。チリン

はお母さんのかたきをうとうと、つよくなるためオオカミのウォーにでしいりします。ウ

ォーのもとでまいにちくんれんをつみ、3年たったころ、チリンはひつじとはみえない、

すごいけだものにかわっていました。はげしいあらしの晩、ウォーとチリンはまきばを

おそいました。そのときチリンはすきをみて、ウォーをころし、ははおやのふくしゅうを

はたしたのです。ウォーは死ぬまぎわ「ずっとまえから、いつかこういうときがくるとか

くごしていた。おまえにやられてよかった。おれはよろこんでいる。」と最後にいいまし

た。チリンのむねははれません。チリンはなきながら、どこともなく、やまをこえていき

ました。


アンパンマンのキャラクターたち

 アンパンマンのキャラクターはいまでは2000以上だそうです。ひとつの村くらいの

人口です。

 アンパンマン・・・・太陽のような存在。弱点は汚いものが苦手で、「かびるんるん」
            
            に弱い。水や湿気にも弱い。得意わざはアンパンチ。正義の味方
            
            だからマントを着けている。
 
バイキンマン・・・・2本の触覚、みじかい尻尾、背中に小さな羽根、ギザギザの歯で
            
            黒くて、ユーホーにのっている。アンパンチを受けるがぜったい死
            
            なない。「ハヒフヘホー」と笑う。

 ドキンちゃん・・・・わがままで自分を美人だと思っている女の子。男の人に人気があ
            
            る。食パンマンに好意をもっている。
 
 ロールパンナ・・・メロンパンナのおねえさん。バイキンマンがこっそりバイキンジュー
            
            スを飲ませたために、良い心と悪い心のふたつのハートをもって
            
            生まれてしまう。

 食パンマン・・・・・知的な二枚目。食ぱんまんカーを運転して、給食のしごとをしてい
            
            る。詩集を読んだりしてちょっと気取りや。


わたしが正義について語るなら

 やなせさんが4年前出版社のもとめに応じて書かれた本です。わたしはすぐれた知性

の人間ではありませんがと、ことわりつつ、出生や戦争体験、絵本作家としての歩みを

語っています。54歳のとき、「あんぱんまん」が出版されたのですが、出版社や評論家

の評判はよくなくて、最初に「アンパンマン」を認めたのは3歳から5歳の子どもでした。

子どもは字を知らなくて本が読めなくても、物事の本質はわかってしまう。すごいです。

本の中から抜粋します。
 
 ○ばい菌が絶滅すると、人間も絶滅する。絶えず両方が拮抗して戦っているという
  
   のが健康な社会なんです。

 ○全部善良というわけにはいかなくて、必ず敵対するものがある。そのバランスが
   
   良くとれている時が健康な社会です。

 ○誰にだって良心と悪心があります。いつもは良心が悪心を抑制しているんですね。
   
   そのバランスが崩れて悪のほうが強くなると、悪いやつになる。
 
 ○自分は自分の範囲でやるしかない。そういう人間が少しふえていけばいいんです。
   
   世の中には悪もある。悪の部分が少し少なくなればいい。
 
 ○「アンパンマン」のマーチの中に
      
      なんのために生まれて   なにをして生きるのか
   
   という歌詞があります。ぼくは人が人らしく、うれしそうに笑う声が好きだ
   
   「さようなら」だけが人生で、最後のほうはみんなおんなじ、原則的には
   
   悲愁の道。だからぼくは笑わせたい。心がかるくなるような、今が楽しく
    
   なるような。
 
 ○この世の惨苦、終わらない戦争、血まみれの惨劇、嘘つきの政治家、金権体質、
   
   全てをぼくは憎悪するけれども、怒るよりも笑いたい。ひととき全てを忘れていた
  
   い。人生なんて夢だけど、夢の中にも夢はある。悪夢よりは楽しい夢がいい。
   
   すべての人に、優しくして、最後は焼き場の薄けむり。誰でもみんな同じだから
   
   焦ってみても仕方がない。


 
いちょうの実

 宮沢賢治の童話です。
 
いちょうの木が母親で、いちょうの実はいとし子です。子どもたちは旅だちをまえにし

てそれぞれに「旅立ちたくない。いつまでもお母さんのところにいたい。」「風に乗って

空の世界へ行きたい。」「アンズの国の王様になりたい。」とそれぞれに不安や夢をい

だいて旅立っていきます。北から氷のように冷たい透きとおった風がゴ−ッ吹いてき

たとき、「さよなら、おっかさん。」「さよならおっかさん。」子どもらはみんな一度に雨の

ように枝から飛びおりました。毎年、毎年くりかえされる光景に北風は笑って、「今年も

これでまずさよならさよならっていうわけだ。」といいながらつめたいガラスのマントを

ひらめかして向こうへいってしまいました。
 
 


なめとこ山の熊
 
宮沢賢治の童話です。
 
猟師の小十郎は生きるために熊を撃って生活している。ある日小十郎は山で大きな

熊に出会い、鉄砲を向けると熊は「おれには今仕事があるあるから、二年ほど待って

くれ二年たったら必ずお前のところに行くから」。それから二年たったある日、熊が小

十郎の家の前で血をはいて死んでいました。熊は約束を守ったのです。このことがあ

ってから小十郎は熊を撃つことができなくなったのです。熊狩りに出かけて、熊を撃て

なくなった小十郎は身をささげる様にして熊に殺されてしまう。その後不思議な世界が

展開します。山の上の平らで、熊たちが環になってイスラム教徒が礼拝するときのよう

に、小十郎の死骸を弔っていたのです。おのおの黒い影をおき、フイフイ教徒の祈る

ときのようにじっと雪にひれふしたまま、いつまでもいつまでも動かなかった。それらの

大きな黒いものは、オリオン座の星が天のまん中に来ても、もっと西へ傾いても、じっと

化石したようにうごかなかった。
  
詩と童話の創作は賢治にとっては信仰の表現でした。「草木国土悉皆浄仏」
  
という仏教の思想は、自然界の全てのものが弱肉強食の世界でありながら、
  
他者への思いやり(利他)の心を持って生きているというものです。こういう視
  
点からみると、難解に思える賢治の世界も案外分りやすいと思います。植物、
  
動物、鉱物にいたるまで擬人化や風刺ではなく、一体化します。